我が家で一番電力を消費している家電は、地味に24時間365日連続稼働し続けている冷蔵庫です。
これをベランダのソーラーパネルで稼働できればかなり電気代の節減になると思われるのですが、曇り続きでバッテリーが枯渇すると冷凍食品が全部溶けてしまうリスクがあります。
そこで、バッテリー残量が少なくなったら自動的に商用電源に切り替わる「グリッド切替機」を導入してみることにしました。
今回導入したグリッド切替機は、バッテリー電圧を監視して、設定値を下回ったら電源を切り替えるだけの単純な機械です。安価で応用の幅が広く、バッテリーは12Vでも24Vでも48Vでも使えますし、5500W以下ならインバーターも選びません。
蓄電システム.comさんで「NV-Q4500PLUS」という名前で販売されていましたが、最近はAmazonやAliexpressで「ATS-11KW」という名前でも販売されています。MOESというメーカーがアリババでOEM供給しているので、そこから直接1台単位で$45(送料・関税別)で購入することも可能です。
ヤフオクで安価な自作切替機を出品されている方々(例①・例②)もおられるので、条件が合えばそちらを導入するのもアリかもしれません。上記既製品にはない、インバーター出力停止検知機能やリモコン・120Aリレーを備えたものもあるようです。
ウチはポイントが貯まっていたので国内AmazonでMOESが出品しているものを購入することにしました。
国内Amazonでの購入でしたが、中国浙江省から国際郵便で24日間かけて届きました。
英語・ドイツ語・スペイン語マニュアルと、取り付けネジが付属していました。日本語マニュアルはありません。
端子は4種類。左から、商用電源入力、電源出力、インバーター入力、右の緑色の端子はバッテリー電圧監視ケーブルの接続端子です。
電力端子にL・Nと書かれているので、まさか交流電源のL相とN相を合わせなきゃいけないモノなの?と不安がよりぎます。スマホのGoogleアプリのカメラ翻訳機能を使ってマニュアルを読んでみましたが、「N端子をアースに繋げるな!」と書かれている以外、そのあたりの詳しい情報は何もありませんでした。
単純にコンセントプラグ繋げて使おうと思ってたのですが、念の為ちょっとフタを開けてリレー配線を確認してみます。
開けてみると制御基盤とリレー部分が完全に独立した造りになっていました。
どうやら制御基盤はバッテリー電圧監視ケーブル(緑の端子)から供給される電力のみで稼働しているようです。商用電源入力やインバーター入力からの電力線は何にも繋がっておらず、ただリレー経由でそのまま出力されるだけの単純設計でした。
インバーターが過負荷エラー等で稼働停止したとしても、それを検知して商用電源に切り替えるような機能は無さそうですね。
使用されているリレーは60Aタイプのものが使用されていました。交流は250Vまで、直流は28Vまで行けるようです。ATS-11KWという型番は、AC250Vの国で利用した場合に11,000Wまで使用できますよという意味だったんですね。(安全マージン5A)
これなら交流電源切替機としてだけでなく、直流のメイン・サブバッテリー切替機としても使えそうです。
但しリレーのスペックから推察するに、リレーコイルが常時4Wくらいバッテリー電力を喰いそうです。
肝心のリレー周りの配線はN相同士が中で直結されていたりすることもなく、ちゃんとL側・N側それぞれ独立したリレーがついていました。L・N相を逆接続しても問題無い造りで一安心。単純にコンセントプラグを繋げるだけで使えそうです。
ベースには何故か巨大なアルミヒートシンクが使用されていました。リレーは足で浮かせて固定してあるのでリレー焼け防止でもなさそうです。MPPTチャージコントローラー用部材の使い回しですかね?
早速コイツを駆動させるためのバッテリーケーブルを取り付けていきます。
緑色の端子は引っ張ると本体からスポッと抜けます。2.5sqまで噛める端子台が付いていたので、丁度家に余ってたエーモンの2.0sqのダブルコードを使用してバッテリーに接続することにしました。
間隔の狭い端子台に撚り線を噛ませるのは、ささくれた撚り線でショートしたり、亜酸化銅の発生による接触不良で過熱して周囲の樹脂が溶けたりするリスクがあるので個人的にはあまり好きではありません。
今回はAC100Vの撚り線も端子台に接続しなければならず、コワイので念の為棒端子を買ってきました。12Vのバッテリー線にもコレを使ってみます。
緑色の端子台は奥行きが浅めだったので、セリアのノギスで穴の深さを測って・・・
ケーブルに圧着した棒端子の先端を、その深さに合わせて切断。
絶縁キャップも付属しているので、銅線部分を一切露出させずにガッチリ端子台に固定することができます。
ケーブルの反対側には、バッテリーに接続するためのM8の丸端子を取り付け。
念の為間に10Aヒューズもかませておきました。
AC100Vケーブルの製作ですが、露出配線の接続作業は経済産業省が公表している「資格が不要な軽微な工事」に含まれると個人的には思っています。まぁ色んな解釈や主張があるかと思いますが各自自己責任でお願いします。
商用電力入力用とインバーター入力用の、2本のコンセントプラグを作ります。
ホームセンターで2sq2芯のキャブタイヤケーブルを買って来て、コンセントプラグに繋げます。
撚り線をそのままネジ止めするとササクレてきた時にショートしてコワイので、R2-3.5の丸端子に圧着してからネジ固定するようにしています。
AC100Vの撚り線を端子台で噛んで固定するのはコワイので、先程の棒端子にしっかり圧着してから噛ませることにします。
絶縁キャップを被せてガッチリネジ固定すれば、撚り線が露出することもササクレることも一切ありません。
出力端子の先にはテーブルタップを接続。こちらも撚り線の先をR2-3.5丸端子で圧着してからネジ止めしています。
電力の入出力ケーブルが取り付け終わったら、早速コンセントプラグを部屋のコンセントとインバーターに差し込みます。バッテリーケーブルも緑の端子に差し込んで、本体上部のスイッチを入れれば切替機が起動!
切替機のスイッチが入っていないときや、バッテリーケーブルを差し込んでいないときは、商用電源からの電力が出力されていました。スイッチが入った途端にカポン!とリレー音がして、インバーター入力からの電力に切り替わりました。
画面中央に現在のバッテリー電圧が表示されています。電球マークの左右に鉄塔(商用電源)とDC/AC(インバーター)のマークが描かれており、どちらの矢印が点滅するかで切り替え状況を表示しています。
真ん中の■マークのボタンを押すと、画面左側のモード表示が「LV-SW」に変わります。この画面で、何ボルトまでバッテリー電圧が下がったら商用電源に切り替えるかのしきい値を設定できます。▲▼ボタンを押すと電圧表示が点滅して数値を増減でき、■ボタン長押しで決定・反映されます。設定時にバッテリー電圧が既に設定値を下回っていた場合は、即時商用電源に切り替わります。
曇りが何日も続く場合、商用電源に切り替わった後もインバーターと切替機の待機電力はバッテリーから吸い出され続けるので、充分に余裕を持った電圧にしておいたほうが良いと思います。私は当初、写真の通り12Vに設定していましたが、リチウムリン酸鉄バッテリーを長期間枯渇状態にしておくと劣化が進むので、後で12.5Vに訂正しました。
もう一度■ボタンを押すと、画面左側のモード表示が「HV-SW」に変わります。この画面で、何ボルトまでバッテリー電圧が上がったらインバーター出力に戻すのかのしきい値を設定できます。数値設定操作は先程の画面と同じです。
これで冷蔵庫をソーラーパワーで安定稼働できるリビング発電所の完成です!
切替機のスイッチを切って商用電源に手動で切り替えれば、アンモ缶ポータブル電源部分だけ取り外してキャンプに持ち出すことも可能です。
切替機を家の壁に取り付けると電気工事士法の「造営物への取り付け」に該当してしまうので、プリンター台に取り付けて運用しています。
YouTube版のレシピも制作しています。詳細な動作テスト結果についてはコチラをご覧下さい。
動画の概要欄に詳細な使用部材と工具も記載していますのでご参考にどうぞ。
リン酸鉄リチウムセルの満充電域と枯渇域の間のセルバランスが揃う電圧エリアがやたら狭いので、トランスフィードバック方式の10Aアクティブバランサーを導入して効果を検証してみたいと思います。
お楽しみに!