Gadget・PC Repair & Leather Craft Workshop

アリエクスプレスで不良品を掴まされてしまった時の対処

先日作成した、格安中華LiFePo4セルを利用した自作1,280Wh級ポータブル電源ですが、部材調達時のトラブル経験から学べた教訓が色々ありました。折角なので今回はその顛末を記録に残しておこうと思います。

「激安部材調達の為なら海外業者との手に汗握る交渉もやぶさかではないぞ!」という方は以下ご参考にどうぞ。ちなみに当方、中国語はサッパリ、英語もあまり得意ではありません。

「その手のハプニングは楽しむ余裕がないのでストレスになっちゃう!」という方は素直に国内通販で13万円クラスの既製品ポータブル電源を買いましょう。

1.今回利用したストア

今回はAliexpress上の「HQ Battery Factory Store」というストアから購入しました。

格安LiFePo4セルを大量に出品しており、フィードバックコメントを見る限りはそこそこ評価も良いストアでした。

他にも同じような価格帯・品揃えでLiFePo4セルを販売している「SMALL DEN Battery factory Store」という、メーカー直販らしきストアもありますが…

ストアトップページ左上ののストア名 → Business Infomationの順にクリックして、運営会社の詳細情報を確認してみると2件とも同一の会社でした。

2.届いたLiFePo4セルの初期状態

着荷検品時、4本中1本だけがわずかに膨らんでおり、他の1本には軽微な打痕が見られました。LiFePo4バッテリーは比較的安全で、コバルト系リチウムバッテリーと違って落としたからと言ってすぐに熱暴走を起こして燃えたりはしませんが正直不安が残ります。

全てのセルが電圧3Vを切っている状態でした。

3.まずは出荷元に連絡してみる

不具合についていきなり評価欄にクレームを書き込む行為は、メンツを重んじる中国の文化ではかなり心象の悪いマナー違反のようです。スムーズに交渉するためにまずは出品者に直接連絡を取ってみます。

Aliexpressのスマホアプリの場合は、画面下のメッセージをタップします。

メッセージ画面で、連絡を取りたい出品者を選んでタップします。

すると、出品者と連絡の取れるチャット画面が開きます。

Aliexpressのチャットは日本語で入力しても自動翻訳されて相手の画面に表示されるようです。でも、かなりいいかげんな翻訳をされてしまって誤解を生みトラブルの元になるので、英語で送ったほうが良いという話をよく聞きます。私は正直英語が得意ではないので、Google翻訳で英語に訳したものをコピペして送りました。

Google翻訳も時々おかしな訳文を吐き出します。訳文を再度日本語へ変換してみて、おかしな文章にならないかを確認しながら送信するのが良いと思います。Google翻訳は一人称を勝手に「We(我々)」に変えてしまう傾向が強いです。

今回は証拠写真を添えて受領時の商品の状態を報告し、問題の2セル分を交換または返金して貰えないか?と訊いてみました。

4.安易な妥協案の罠に乗ってはいけない

次の日、出品者から返事が来たのでGoogle翻訳にコピペしながら読んでみると…

  • ハロー!膨らんでるのは暑い天候のせいで普通の事だよ
  • 長時間充電したり3.65V超えたりしちゃダメだよ
  • きっと輸送中に壊れたんだろう、5ドルで手を打たない?

と、自分たちに落ち度はないと他の要因を匂わせて安い金額で妥協を誘ってきました。2万円以上する製品の不具合を500円ソコソコの返金で済まそうとはとんでもないハナシですね。

調べてみるとこれはAliexpress内ではよくある手口のようです。安易にこの解決金を受け取ってしまったがばかりに、後々Aliexpress運営側に仲裁を依頼する事態になった時に「金銭の受領を以て紛争は解決済」と判断されてしまうそうです。

その手には乗りません。まだ充電はしてないと伝え、着荷時の梱包状態の証拠写真を提示して「落下痕は輸送中についたものではない」との主張を伝えます。

それでも出品者は「出荷前に必ず外装をチェックしている」と主張し、5ドル送るからペイパルアカウント教えてくれと再度誘ってきました。

これ以上は平行線と思われます。ここで交渉がこじれると、今後の充放電テストでもし致命的な欠陥が発覚した場合に返品交渉が難しくなると思われたため、一旦相手の主張を受け止めることにしました。

後々Aliexpress運営が介入することになった時に、こちらの立場を正しく把握してもらえるような会話記録を残します。「納得はしていないが一旦そちらの主張は受け入れる。5ドルは要らない。返金も返品も対応するつもりがないことは理解した。」と回答しておきました。(誤翻訳のまま送信してますが…)

そしてこの時点でようやく商品評価欄に、着荷時の品物の状態と出品者の対応についてありのままを記録しておきました。

5.重大な欠陥の発覚

そして前記事でも書いたとおり、放電テスト中に、膨らんでいた3番セルに重大な欠陥があることが発覚しました。

満充電の状態から91Aで放電中に、セル電圧2.9Vを下回る異常電圧降下が発生しています。販売時のスペック表記では「連続放電能力1C」「最大放電能力3C(30秒以内)」と明記されていましたが、3番セルはその要件を全く満たしていませんでした。充電完了スピードも1本だけ異様に速かったため容量も100Ahには遠く及ばないと思われます。

放電テスト時のBMSの画面を証拠写真として添付し、出品者へテスト結果を伝えて不良セルの交換を要求。

すると放電中のバッテリーの写真を送信するよう求められました。接続方法やケーブルの細さによる電圧降下の可能性を疑われているのかもしれません。

バッテリーに付属のバスバーを利用している様子と、14sqのケーブル2本づつ(合計28sq)で極力短く接続しており、配線方法による電圧降下ではない事が伝わる写真も追加送信しました。

6.出品者側の姑息な要求

すると今度は「ハロー!悪い評価コメントを消してくれたら交換品を送るよ。ヨロシク!」との回答。

Aliexpressは一旦書いた評価コメントは後から削除できない仕組みになっています。それを伝えずに交換条件として提示して来るあたり意地が悪いですね。こちらも負けじと「オッケー、どうやって消すの?」と返してやります。

すると次の日「ハロー!僕らは知らんよ。Aliexpressのカスタマーサービスに自分で訊いておくれ。ヨロシク!」との回答。ぐぬぬ。

OK、ならばお望み通りカスタマーサービスにここまでの経緯を洗いざらい報告して、どう対応したら良いのか相談させて貰うとしましょう。

7.Aliexpressカスタマーサービスへ連絡(失敗)

Aliexpressアプリからカスタマーサビスへ連絡を取るためには、まずはTOP画面下の「アカウント」をタップ。

アカウント画面を一番下までスクロールして、左側の「ヘルプセンター」をタップ。

ここから表記が英語になります。Help Center画面を一番下までスクロールして「Online Service」をタップ。

すると、Evaという自動応答ボットとのチャット画面が開きました。

当初は、問い合わせ内容を選択肢のボタンから選んで行くと担当の有人オペレーターに繋がると思ってたのですが、解決方法の提案が自動表示されるというだけのモノでした。(この時点では、有人対応に切り替える方法があることを知りませんでした…。)

ちなみに、選択肢を選んでいって最終的に自動表示された案内の内容は「Open Dispute(異議申し立てをして)」でした。

AliexpressのOpen Dispute(異議申し立て)は、最終手段とも言える措置です。

具体的には、こちらのクレーム内容と補償リクエスト(返金等)を登録してから3日間以内に出品者が対応案を入力しないと、強制的に返金等のこちらの要求が通ってしまうという強力な手段です。通常は出品者側も対応案を入力し、同意できればそれで解決。同意できなければAliexpressが間に入って裁定を下すという仕組みです。

いきなりOpen Disputeするのも乱暴なので、一応出品者に「言われたとおりカスタマーセンターにコメント削除方法を問い合わせたら異議申し立てをしろって言われたよ」と伝えます。

しかし返ってきた回答は「いいよ、指示に従って。知らんけど。」

OK、ならばボットの案内通り異議申し立てをするとしましょう。

8.異議申し立ての方法

ここからはPCブラウザの画面で説明します。

ログイン後まずは画面右上の人型アカウントアイコンにマウスカーソルを重ね、表示されたプルダウンメニューから「私の注文」をクリック。

注文一覧画面が出るので、該当する商品の欄の「View Detail」をクリック。

注文の詳細画面が出るので、下の方のStatusの欄に小さく書かれた青字の「Open Dispute」をクリック。

My Proposal内のComments欄に、商品の状況や出品者の対応、全額返金を要する理由を記入します。Evidenceの欄には証拠となる写真を5枚まで登録できます。

以前に別件で、注文の半分のサイズしかない商品が届いたのに出品者にしらばっくれられて異議申し立てをしたことがあるのですが、証拠写真のメジャーのメモリが不鮮明という理由でAliexpress運営側に申し立て却下を裁定された苦い経験があります。それくらいAliexpress運営側は証拠写真を重視しているので、写真添付は慎重に行いましょう。

4個中の1個分しか返金が認められない可能性もあります。「LiFePo4バッテリーは4本セットでしか用をなさないので全額返金が必要」としっかり記入しておきます。

異議申し立てをすると、出品者のもとにシステムから通知が行くようです。のらりくらりと不誠実な対応ではぐらかしながら異議申し立てができる期限の15日が過ぎるのを待つ悪質な出品者もいるようですが、さすがに異議申し立てを3日放置すると自動で全額が返金されてしまうので、今度こそ本腰を入れて対応してくれるものと思われます。

9.やっと相手が本腰を

今まで1日1回くらいしか返事を送って来なかった相手がいきなりマメにメッセージを送ってくるようになりました。尻に火が着いたようです。

「まずはカスタマーサービスに言って悪いコメントを削除してもらってくれ」との事なので、「やり方がわかりません」「見つけられません、どのボタンから操作すればいいの?」と、こんどはこちらがのらりくらり答えます。

「ロボットじゃなくて人間のカスタマーサービスに頼んでくれ」との事なので「どうやって?」と訊くと、「カスタマーサービスに訊いたけどやっぱり削除できなかった」だの「あなたは異議申し立てを取り下げることが可能」だの要領を得ない回答が立て続けに送られてきました。

まぁこのまま3日間待てば全額返金を受けられるので、まともな回答が得られない限りはスルーすることにしました。

2日後、さすがに焦ったのか相手の要求が変化しました。

「コメントはやっぱり削除できないので『出品者はうまく問題を解決した』と追加で書き込んでくれればいい。あと、交換品を送るためには異議申し立てを取り下げてもらう必要がある。もし交換品が届かなかったら再度異議申し立てをすればいい。」

全く問題が解決してないのにウソの評価を書かせて、挙げ句異議申し立てを取り下げなきゃ交換品を送らないとはトンデモナイ話です。確か、異議申し立てを取り下げてしまったら二度と申し立てができなくなるシステムだったような気がします。その手には乗りません。「交換品が届いて性能テストに問題なかったら異議申し立ては解決するよ。それでいいよね?待ってるよヨロシク。」と返しておきました。

その後も「お願いだから異議申し立てを取り下げてくれ」との要求が立て続けに届きます。私の方もそろそろ本腰を入れて、ボットではない有人カスタマーサービスへの問い合わせ方法が本当にないのか調べてみることにしました。

10.Aliexpressの有人カスタマーサービスへの連絡方法

よくよく調べてみたところ、先程の自動応答ボットEvaとのチャット画面で「livechat_link」というコマンドを入力すると、有人カスタマーサービスに繋がるようです。知らなかった!

この方法を頑なに教えようとしなかった出品者の後ろ暗さが垣間見える気がします。

ここも一応日本語で入力しても自動翻訳してくれるようですが、おかしな訳文で話がこじれるのもイヤなので、ここもGoogle翻訳で英文にした確認済みメッセージを入力します。

有人オペレーターのAliceさんめちゃくちゃ親切!

出品者とのやり取りや異議申し立ての内容をすべて確認した上で、こちらの気持ちに寄り添う言葉をかけてくれました。

そして、出品者に言われるがまま異議申し立てを取り下げなかったことを褒めてくれて「キャンセルしないでください」とハッキリ指示をくれました。あれはやっぱり異議申し立てを取り下げさせてやり過ごす手口だったんですね…。

そして、今後必要な操作を画面写真付きで詳しく教えてくれました!感謝!

11.出品者の解決策提案を受け入れる

有人カスタマーサービスへ問い合わせた結果をスクショと共に出品者に報告すると遂に相手も観念したようです。異議申し立て画面の「Seller’s/AliExpress’ Proposal(出品者・アリエクからの提案)」の欄が更新されました!

さっきまでは「No return & No refund(返品・返金は対応しない)」としか書かれていなかった欄のコメント部分に、「荷物は再発送されました。追跡番号は後ほど。どうか異議申し立てをキャンセルして下さい。ヨロシク。」と追記されました!

・・・最後の最後まで罠が張ってありますね。「キャンセルして下さい」の言葉にだまされて画面左下の「Cancel Dispute」を押してしまうと申し立てが取り下げられてしまいます。先程カスタマーセンターの方が画像入りで教えてくれたとおり、解決策の提案の下にある「Accept(了承)」ボタンをクリックすれば、返金返品なしで交換品を発送して貰うことを了承することができます。

12.結末と教訓

異議申し立て画面での合意に至ってからの出品者の対応は、今までのは何だったんだというくらい迅速で、その日の晩には追跡番号と外装写真を添えて発送連絡が届きました。そして10日程で交換品が届き、充放電テストの結果も良好でした。ここまで長かった…。

正直面倒臭かったけど、とても勉強になりました!
今回得られた教訓をまとめるとこんな感じですかね。

  • 商品が届いたらなるべく早く外装を検品すべし
  • カタログ通りの性能があるかも早めに確認すべし
  • 異常があったら証拠写真をしっかり残す
  • クレームはまず出品者に直接伝える(中国では相手のメンツを尊重)
  • 商品のフィードバックコメントは後から消せない
  • 悪い評価を書くと相手の交渉カードに使われることがある
  • 安易に解決金を受け取ってはならない
  • それでも解決しない場合はOpen Dispute(異議申し立て)
  • 異議申し立てができるのは商品受領後15日間だけ
  • 出品者は15日経過を待つために牛歩戦術を取ることがある
  • 出品者はあの手この手で異議申し立てを取り下げさせようとする
  • 困ったときはカスタマーサービス(有人)へ相談できる
  • 有人対応して貰うにはチャットで「livechat_link」と唱える
  • カスタマーサービス(有人)はとても親切で頼りになる!
  • 異議申し立て画面で相手が納得の行く解決策を提示したら「Accept(了承)」
  • 却下したいときは「Reject」を押して運営に最終裁定してもらう
  • 出品者に誘導されても決して「Cancel Dispute」を押してはならない

「中国通販ってちょっと怖い…」と感じる方も、Aliexpressの顧客保護のしくみや大陸の商習慣が分かれば少しは安心して利用できるかもしれませんね。挑戦してみようという方はご参考にどうぞ。

まぁ正直ちょっと面倒臭いですけど、国内通販と一桁違う価格で調達できるので「差額10万円は交渉作業のギャラ!」と考えるとガゼンやる気が出ます!


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