起動しなくなったNEC製ノートPCの修理依頼を頂きました。
機種はLAVIE Direct NS 2018夏モデル(PC-GN165GDAD)、まだまだ新しいPCです。
買ってまだ3年チョイとのことなのですが、「使わない時も電源を入れっぱなしにしていることが多かった」とのことなので内蔵HDDの寿命なのかもしれません。(私が某社ヘルプデスクで故障受付をしていた頃はコンシューマー向けHDDの平均寿命は3年半と言われていました。)
依頼主にそう話したところ、なんと「HDDではなくてSSHD搭載機です」との回答が!
SSHDとは、SSD + HDDハイブリッドドライブのことです。大容量SSDがまだまだ高額だった頃、SSDのスピードとHDDの大容量を安価に両立できるとして流行りました。しかし速いのは最初だけらしく、実質は低速回転HDDと言われていました。SSD部の容量から察するにHDD部分へのアクセス頻度を劇的に減らせるワケでもないので、寿命は通常のHDDとあまり変わらないのかもしれません。
とりあえず状態をみてみましょう。
電源を入れるとNECロゴとぐるぐるが1分間チョイ表示されて・・・
エラー画面が表示され、自動的に再起動が始まります。
その後「自動修復を準備しています」表示のままフリーズしました。
特段SSHDからカッコン音が聞こえてくるわけでもないのですが、念の為数時間放置して様子を見ても修復が完了する様子はありません。
それでも一応、SSHDの物理故障と結論付けてしまう前に、windows標準のOSリカバリーを試してみることにします。
てっきり起動時F12キー連打でBIOSメニューが出るもんだと思い込んでましたが。
リカバリーシステムへのアクセス方法がみつけられないので取説を読んでみると、本体左側面に「NOVOボタン」という物理スイッチがあるとの事。早速クリップを延ばして突いてみます。
BIOSメニューっぽいものが出ました。最近のNECのPCは専用の物理ボタンになってるんすね。
メニューの一番下に「System Recovery」と書かれているので、↓キーで選択してEnterキーで決定してみます。
リカバリーシステムが起動できました。
依頼主曰く「必要ファイルは外部ストレージにバックアップ済なので購入時の状態へ初期化して欲しい」とのことだったので、「トラブルシューティング」→「このPCを初期状態に戻す」を選択。
するとこんな選択肢が出てきました。私最近のwindowsPC事情に疎いのですが、いつのまにかmacみたいにクラウドからの再インストールができるようになってたんですね!
でもまずは起動不可がSSHDの物理故障によるものなのかどうかを切り分けたいので「ローカル再インストール」を選択してみます。
3分後、コケました。ダメみたいです。クラウドからの再インストールも試してみましたが結果は変わりませんでした。
これはいよいよSSHDの物理故障っぽいですね。開けてSSHD取り出して、S.M.A.R.T情報を確認してみましょう。
本体を裏返して13本全部のネジを外してみます。この機種は全部同じサイズのネジでした。普通のプラスドライバーで大丈夫。
型番ラベル左下のネジが光学ドライブ固定ネジでした。なので光学ドライブは左に引っ張るだけで抜けました。
裏蓋は、光学ドライブが挿さってた上あたりが一番薄くて柔らかそうなので、そこからツメを入れてみます。
隙間に突っ込んだツメを横にスライドさせていくとパチパチとスムーズに裏蓋がはずせました。
(詳しくはYouTube動画参照)
裏蓋が外れました。
「NECって10年くらい前にlenovoに買われたと聞いたけどThinkPadぽくないなー」なんて思ってましたが、中身はやっぱり共用部品使ってるんですね。
SSHDは左下にいました。一般的なSATA2.5インチ7mm厚のもので一安心。しかし・・・
ギャース!積まれていたのは故障率の高さで悪名高いSeagate社製ドライブでした・・・。
最近のSeagate社製HDD故障率はだいぶ改善されたみたいですがこのPCは2018年製。圧倒的故障率の高さを誇っていた時期の製品です。
本当はSSHDを取り出してS.M.A.R.T情報を読み出し、詳しく診断しようかと思ってたのですが気が変わりました。仮にchkdskコマンドでこのSSHDをなんとかリカバリーできたとしても「修理後にまたすぐ壊れた」という爆弾を抱え続ける事になります。今回データ救出は依頼されていませんし、そもそもハイブリッドドライブはSSD部・HDD部を振り分ける内部ファームウエアの挙動をユーザー側でコントロールできず、chkdskコマンドが正しく機能するかどうかも未知数です。
論理・物理いずれの障害にしてもリカバリー領域は壊れて読み出せませんし、今は1TBのSSDもだいぶ安価になっているので依頼主には内部ストレージ交換をオススメしました。
SATA2.5インチ7mm厚の1TBのSSDはクルーシャルのBX500が安価に入手できました。元々のSSHDよりだいぶ安い!
価格コムのレビューのベンチマークを比較すると、元々のSSHDより5倍程度読み込み速度向上が見込めそうです。そして寿命は360TBWあるので、毎日100GB書き込んでも10年近く持つ計算になります。
交換後のSSDはカラッポなので、当然リカバリ領域もありません。こういうときのためにPC購入時にリカバリーメディアを作成しておく必要があるのですが、依頼主に確認すると「作成していない」とのこと。仕方なくメーカーから購入することにします。
NECの公式サポートサイトによると、新進商会というところで委託販売しているようなので注文しました。販売サイトは型番と製造番号で検索できるようになっており、2週間ほどでDVD-R2枚組で届きました。
部品代合計24,024円 + 作業料でお見積り致しました。
部品も揃ったので早速患部を摘出して行きましょう。
SSHDのマウンタが左側のツメでシャーシに留められているので外します。
ツメが外れたらSSHDの左側を持ち上げて、左方向へゆすりながら引っ張れば外れます。
SSHDからマウンタを剥がします。
マウンタは柔らかい樹脂と薄いアルミシートでできているので、グニャッと曲げて簡単に外せました。
ドライブのネジ穴に突起をはめて固定されていました。
剥がしたマウンタを新しいSSDに着せて・・・
あとは元通りに組み上げればハードウェア側の修理は完了です!
「あとは購入したリカバリーDVDから起動して画面の指示に従えばOK!」と思ってたのですが・・・
と表示されて起動しません。
どうやら起動時にカラッポのSSDのほうを読み込もうとしてる模様。BIOSから起動ドライブを指定してあげる必要がありそうです。
再びNOVOボタンぽちっとな。
NOVOメニューが出たら3番めの「Boot Menu」を選択してEnter。
どのドライブから起動するか訊かれるので「EFI DVD/CDROM」を選択してEnter。
NECのロゴが出た後、再セットアップデータの読み込みが始まりました。
あとは画面の指示に従うだけですね!
4分半かけて再セットアップシステムが読み込まれました。
「再セットアップを開始する」を選択してEnter。その後2回表示される確認画面も「次へ」「はい」で進みます。
わりとすぐディスク入れ替えを指示されました。その後何度か再入れ替えの指示あり。
30分チョイで一旦中断可能になりました。
この後40分程「関係ないキー操作やマウス操作を行わないでください」と警告が表示されて中断不可になるので、忙しい場合は「シャットダウン」。
最後に、本体付属のBluetoothマウスの接続操作を求められます。
Bluetoothマウス接続操作が終わるとコルタナが喋りだしました。
これでようやく購入時の状態に戻すことができました。お疲れさまでした!
本来ならCrystalDiskInfoをインストールして、交換後SSD速度実測結果とか載せたいトコロではありますが、自分のPCではないので今回は自粛。
あと、再インストールディスクにOfficeは入っていませんでした。Office内蔵モデルの場合はWindowsの個人設定が終わった後に、Microsoft Storeからダウンロード・インストールする必要があるようです。
↑NEC Lavie公式サポートサイトにはそう案内されていますが、Microsoftアカウントページから「サービスとサブスクリプション」をクリックして、表示される製品リストで「インストール」をクリックすることでも行けます。
お使いのMicrosoftアカウントにあらかじめOfficeが登録されていることが条件のようなのでご注意を。昔みたいにディスクとプロダクトキーで再インストールじゃないんですね。
詳しくはYouTubeにも載せているのでご参考にどうぞ〜。