昔お世話になった元同僚から出産祝いにパスケースが欲しいとのご要望を頂き、初めて非自家用製品をつくってみました。
ひとさまが手にされるものなので横着はしません。
今回はきちんと型紙を起こします。
型紙に沿って銀ペンで革の表面に線を引き、別たちで線に添って裁断して行きます。今回使用したのは栃木レザー製ピットヌメにキャメルブラウンの顔料染めが施された丈夫で硬い革です。あらかじめ市内の皮革店に依頼して1mm厚と1.5mm厚に漉き加工してもらっています。
パスケースの窓の部分はφ8mmのポンチで四隅を穴あけしてから・・・
ざっくりとくり抜きます。
300番くらいの耐水ペーパーで切断面を平滑にしてから・・・
へり落としの2番で切断面の角を削ぎ落とします。
切断面にトコノールの茶を塗って布で磨くと・・・
白っぽくガサガサした切断面がツヤツヤの丸いヘリになります。
セル板をサイビノールで貼り付けます。耐久性を考えるともしかしたら両面テープのほうが良かったかも。
セル板はクリアファイルをくり抜いて作ろうかとおもったのですが、楕円がきれいに切り抜けない上に大阪の材料屋さんでたった80円で売ってるので、今後の事を考えてちょっと多めに取り寄せることにしました。
部品を組み立ててしまってからでは磨けない切断面は、最初に磨いておきます。300番のペーパーで整えてから・・・
トコノールの茶で磨くとこんな風になります。
パスケースの背面も切り出してサイビノールで縫製部分を接着します。最初は1.5mmの革2枚を背中合わせに貼り合わせて背面にしようかと思ったのですが、全体の厚みが5mm近くなってしまうので作戦変更。1mmの革を貼りあわせ、セル板側の1.5mmの枠と合わせて3.5mmになるようにします。それでもまだぶ厚い気がしますね。ウエハースみたい。
この日たまたま我が家にレザークラフトの師匠が遊びに来ていたので、コインを定規代わりにして角のアール部分を整えるという技を教えて貰いました。厚くて無骨なイメージだったパスケースが、これだけで一気に女性向けな雰囲気になりました。
300番のペーパーで整えてへりを落としたら、厚みも相まってコロンとした雰囲気に。
おもいのほかコバの縞模様が綺麗だったので、着色せずに透明なトコノールを塗って磨き上げることにしました。
ヒモをかけるところも作ります。1mmの革を1cm幅で切り出して・・・
へりを落として・・・
本体に縫い込まれる部分の厚みを押さえるために両端を薄く漉きます。
経年劣化で脂分が抜けたらすぐ切れてしまいそうなので、腕時計のベルト製作等にも使われる頑丈な補強テープを中に仕込みます。海苔巻き煎餅みたいですね。
Dカンを付けて接着します。だいぶ形になってきました。
マルチステッチンググルーパーの先端を捻に付け替え、へりから3mmの部分にうっすらスジを付けます。そしてそれに沿って菱目打ちで縫い穴の印を付けていきます。
以前、菱目打ちを厚い革に打ち込んで折角のキレイな革がグニャグニャになる痛い目に遭ったことがあるので打ち込みません。印を付けるだけです。
エルメスの職人の真似をして、よく研いだ菱キリで縫い穴をひとつひとつ慎重に開けてゆきます。真っ直ぐに刺さないと裏面の縫い目がガタガタになるのでかなり集中力を要します。
刃を抜く時に力を入れすぎて革を傷めた苦い経験があるので、今回は試しに刃にうっすらシリコンオイルを塗りながら作業してみました。これが大正解で、この後の縫製作業の針通りもスムーズになりとても楽に縫えました。
菱ギリで開けた縫い穴を、軽く蝋を引いたビニモ糸5番のオリーブ色で縫います。菱目打ちではなく菱ギリを使用したことで穴が細い斜めの切れ目状となり目立たなくなります。
ケースのフチが伸びてヨレヨレにならないように捻を引いて革の繊維を引き締めておきます。組み立てる前に刻印を入れておくのを忘れていたので、セル板が割れないようにケース内に鉄板を差し込んでから刻印を入れます。
最後にニートフットオイルを含ませて全体を磨き上げて完成!初めてひとさまの手に渡っても恥ずかしくない満足の行くモノができました!
4時間位でサクッとできたので、時間ができてある程度在庫を作れたら定番商品化しようかな?もうちょっと柔らかい革でミシンが使えれば3時間位でいけるかも。
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