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QUCC製トランスフィードバック方式10Aアクティブセルバランサーを導入してみた

先日製作した、激安セルを利用したリン酸鉄リチウムバッテリー。今のところ安定して、我が家の冷蔵庫をベランダソーラーパワー駆動してくれています。しかし各セルの電圧バランスが取れる範囲が約12V〜13.8Vとやたら狭いので、容量の8割ほどしか活用できていません。

そこで、電圧の高いセルから低いセルへ電力を分け与える「アクティブセルバランサー」を導入してバランスを整え、実質容量のアップを図ってみたいと思います。

さらに今回は、YouTube等でよく見るコンデンサ方式の5Aタイプのものではなく、まだあまり情報のないトランスフィードバック方式の10Aタイプの物を敢えて選んでみることにしました。

さぁその効果や如何に?

セルバランサーの必要性

ウチで運用しているのは、半年前にアリエクスプレスで100Ah4本2万円チョイで販売されていた激安LiFePo4セルです。当時CATLやEVEのような大手メーカーAグレード品の供給価格は4万円前後でした。つまり相場の半額、送料を考慮するともっと安く販売されていたことになります。ちなみにAグレード品とは、EV向け大量生産品の品質基準を満たしているものの事です。

工業製品には歩留まりというものがあり、特にLiFePo4セルは品質基準を満たさないいわゆるハネ品が大量に発生しやすいと言われています。ハネ品と言っても全く使えないワケではなくて、少し容量が少なかったり、他セルと特性が少しズレてたりするだけだったりします。基準がシビアなEV向けには出荷できないものの、家庭用蓄電で利用する分には充分です。これらを全量廃棄処分するとなると産廃費がとんでもないことになってAグレード品のコスト競争力も下がってしまいます。そこで他業者が買い取って、低めの公称値を謳ってAliexpressで個人向けに激安販売しているのが実情と思われます。

ウチがAliexpressで購入した激安セルの容量公称値は100Ahで、スペック上は満充電電圧3.65V、枯渇電圧2.5Vの間で運用できることになっています。放電特性が極端に劣っていたセルは不良交換してもらいましたが、それでも4本直列の定格12.8Vバッテリーとして利用した場合の電圧特性は以下の通りどうしてもズレが出てきます。

セルバランサー導入前・満充電域電圧

まずは満充電域。スペック上は1本あたり3.65Vまで充電できることになっているので、理論上は4本合計で14.6Vになるまでは充電できることになっています。でも実際は3.65Vまで充電させると寿命が縮んでしまうので、余裕を持って3.55Vで入力を遮断するようにBMSを設定しています。

上の写真は、充電中にBMSが作動してバッテリー入力が遮断された瞬間の写真です。4番セルだけが電圧急上昇を始め3.55Vを超えましたが、他のセルはまだ約3.4Vしかありません。全体では14.6Vどころか約13.8Vくらいまでしか充電できないことがわかります。

セルバランサー導入前・枯渇域電圧

次に枯渇域。スペック上は1本あたり2.5Vまで使えることになっているので、理論上は4本合計で10Vになるまでは使えることになっています。でも実際は2.5Vまで枯渇させると寿命が縮んでしまうので、余裕を持って2.8Vで出力を遮断するようにBMSを設定しています。

上の写真は、朝起きたらBMSが作動してバッテリー出力が停止していたときの写真です。4番セルだけが2.8Vを下回っていますが、他のセルはまだ3V以上あります。全体では10Vどころか約12Vくらいまでしか使えないことがわかります。4番セルだけが不良品とかそういうことでもなく、充放電を繰り返しているうちに4番セルの電圧が揃って今度は1番セルや2番セルの電圧が狂い出す事もあります。

このようにLiFePo4バッテリーセルには、3.4V以上または3.1V以下になるとセルバランスが著しく崩れる特性があります。これをなるべく揃えてバッテリー全体の実質充電可能容量を増やしてくれるのが、セルバランサーって訳です。

アクティブセルバランサーの選定

↑以前は、LiFePo4セル用アクティブセルバランサーと言えばこの手のものしか見かけませんでした。内部構造や動作原理は不明。キャンピングカーに設置するような400Ah級のLiFePo4セルに取り付けられている実績を目にします。ちょっと高額ですね。

↑最近のYouTubeやBlogでよく見るのはコンデンサー方式の5Aタイプ。数ある検証動画を見る限り劇的に改善する訳では無さそうですが、まぁそこそこ効果はあるようです。とても安価です。

↑一方、最近Aliexpressで売れ筋ぽいのがこのトランスフィードバック方式の10Aタイプ。バランス電流公称値と価格を勘案すると、2021年秋時点ではこのタイプのものが一番コスパが良さそうでした。

出回り始めなので、ネットを検索しても導入検証記事やレビュー動画は全くヒットしませんでした。が、今回は人柱となってこれを導入し、効果を検証してみたいと思います。

届いた品物を確認

Aliexpressで注文して12日で届きました。早いですね。

説明書は付属していませんでしたが、ケーブルが1本付属していました。

付属のケーブルはシリコン被覆っぽい手触りの長さ2.5m、芯線の太さ18AWGのものでした。

恐らくこれを5等分に切り分けてバランスケーブルとして使用しろということみたいです。有り合わせの細いビニール線でも使われて燃えてクレームになったらたまったモンじゃないということでしょうか。

フタは簡単にパカッと開きました。中心には大きめのインダクタ、手前にコンデンサ、奥には小さなトランスが見えます。思ったより随分シンプルな構造です。

手前右側には「B」〜「B4」と書かれた緑色の端子台があり、BMSの電圧測定線と同じ要領でマイナス側から番号順に繋げば良いのかな?という予想はなんとなく付きます。端子台は引っ張れば本体からスポッと抜けました。

謎なのは左手前のセレクタースイッチ。「1-0-2」と書かれているので、何やら動作モードを3段階で切り替えられるようになっているのですが何も説明がありません。到着時は「2」の位置になっていたので、とりあえず何だか解らないうちは触らないことにしました。

2021年12月22日追記

15. Three adjustable balance modes:
1: When the battery voltage is lower than 3V, automatically turn off the balance and sleep.
0:NA
2: active balance is always on and does not sleep

Aliexpress商品説明

その後アリエクスプレスの商品説明表示が更新されて、謎セレクタースイッチの動作モード説明が追加されました。

1.セル電圧が3Vを下回ったら、自動的にバランス動作をオフにしてスリープ

0.何も動作しない

2.常にバランス動作を続けてスリープしない

・・・ということみたいです。

バッテリーセルへの取り付け

付属のシリコン被覆18AWGケーブルを5等分して50cmづつに切り分け、先端にφ6の丸端子を取り付けます。

接続順を間違えると壊れるらしいので、テプラで番号も振っておきます。

Aliexpressの商品説明ページには「配線の前に緑色のコネクターを外す必要があります」との記載があったので、端子台を一旦引っこ抜いて、左からテプラで振った番号順にバランスケーブルを接続。

説明書は付属していませんでしたが、Aliexpressの商品ページに配線図が載せられていました。

つなぎ方はBMSのセル電圧計測線と同じですね。

アンモ缶から取り出したバッテリーセルに、配線図通りにバランスケーブルを接続していきます。

バランスケーブルを全部セルに接続し終わってから、バランサーに端子台のコネクターを接続!

何かの拍子に端子台からバランスケーブルが抜けたりするとショートして火災の元になるので、念の為カプトンテープでグルグル巻きにして固定しときました。

アンモ缶内にバランサーをねじ込めるスキマがあるかが心配でしたが、幸い+と−の出力ケーブルの間にスッポリ収まるスキマがありました。

これで取り付け完了です!

効果検証

さぁ、お手並み拝見と行きましょう。

セルバランサー導入後・満充電域電圧

まず、満充電域のセルバランスは劇的に改善!

バランサー導入前は4番セルだけ3.55Vを超えても、他のセルは皆3.4Vくらいまでしか上がらないという状態でした。

導入後は4本とも、わりと足並みを揃えて上昇してくれるようになり、全てののセルが3.5Vを超えています!トータルでは14.13Vまで充電できるようになりました!

セルバランサー導入後・枯渇域電圧

一方、枯渇域はバランスが劇的にビシッと揃うという訳ではありませんでした。それでも、バランサー導入前のセル電圧高低差と比較してみると339mV→182mVと格差は半分近くになっています。

バランス電流も計測してみました。結果は以下の通り。

B- :0.73A
B1+:0.38A
B2+:0.02A
B3+:1.44A
B4+:1.19A

・・・意外と少ないですね。

Aliexpressの商品説明を読んでみると、10Aアクティブバランサーと言っても常に10Aの電流で電気を融通するワケではないようです。電圧差に応じて増減するようで、「電圧差0.1Vごとに1.5Aのバランス電流」と説明されていました。

上記のデータを計測した時点での電圧差は約0.2Vなので、商品説明通りなら3Aぐらいのバランス電流を流してくれても良さそうなもんですが、実際はその半分くらいしか流れてくれませんでした。

まぁそれでも、小さな電流でもコツコツとバランスを取ってくれるので、2時間半後にもう一度見てみるとセル電圧格差は0.054Vまで解消されていました。何気に全体電圧も0.12V程戻ってますね。

結論

想像していたほど大電流を融通してくれる訳ではありませんでしたが、時間がかかってもきっちり0.05V前後の電圧差に収まるようにバランスを取ってくれるので充分ではないかと感じました。

40Aとかの急速充電器で充電したり、エアコンや電子レンジのような大電流を出力したりするとどうしてもセル電圧にバラツキが出てしまいますが、ソーラーパネルや冷蔵庫のように100Wくらいでじわじわ充放電する分にはこのバランサーでも充分電圧を揃えられると思いました。

「トランスフィードバック方式のアクティブセルバランサーってどうなんだろう?」と迷われている方はどうぞご参考になさって下さいね。

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